よみがな

人物名

くめ

久米

出身

会見郡米子

生年

不詳

没年

不詳

不詳

不詳

不詳

通称

お久米

不詳

官途

不詳

別名

お久米(おくめ)

所属

列 伝

米子の町で評判の町娘。美しい少女で”米子小町”とも呼ばれていた。

 

(久米城の人柱伝説)

1591年(天正19年)、吉川広家によって湊山への米子城築城が始まる。

城の建造は二の丸、三の丸と順調に進み、いよいよ天守閣建造への工程に入ったが基礎となる土台を組み、いざ石垣を積む段階になると決まって豪雨に祟られ、石垣は崩れてしまう。

積んでは崩れの繰り返しで、思うように工事が捗らない事態に普請に従事する関係者らは頭を悩ました。

度重なる天災や事故を目の当たりにし、天守閣建造作業に携わる石工達の間にも「人柱を立てて祟りを収める他に方法がない…」という不穏な声が現場で囁かれ始めた。

吉川広家は築城奉行の祖式九右衛門を始めとする関係者らと相談し、米子の町で評判の町娘を人柱として立て、地鎮を行うことを決定する。

 

季節は春から夏へと移り変わり、米子の町では盆踊りの真っ最中。

町内には太鼓の音が鳴り響き、賑やかな往来では人々が祭の喧騒を満喫していた。

鎮守の広場(加茂町付近)も盛り上がっており、ひときわ美しい少女が盆踊りに参加していた。

盆踊りで盛り上がる広場に突如帯刀した侍達が現れ、踊りの輪にいた少女を無理矢理駕籠に押し込めた。

突然の出来事に広場は騒然とするが、帯刀した侍に抗える町民が都合よく居るわけでもなく、周囲は成り行きを見守るしかできない中、少女を拉致した駕籠は侍達と共に闇の中に姿を消してしまった。

拉致された少女が連れてこられたのは湊山の天守閣の石垣付近であったとされる。

自分の置かれた状況を理解できないまま少女は自由を奪われ、石垣近くに掘られた穴へ移され、生きたまま土を被せられ人柱とされてしまった。

少女が人柱とされた後、石垣が崩れることは無く工事も順調に進み、程なく天守閣は完成。

その後、石垣付近で少女の亡霊を見たという者が次々と現れ、人柱の話が町中から近村まで広まった。

 

その少女の名前が「お久米」であり、米子城が“久米城”と呼ばれる所以ともなった。

米子城付近の町や村では事件以降に「盆踊りには人さらいが出て人柱にされてしまう」という噂が流れ、長い間盆踊りは途絶えたが、現在は復活している。

お久米が拉致された場面では上記の通り有無を言わさず無理矢理拉致されてしまう話と、言葉巧みに誘い出されそのまま誘拐されてしまったとする話があるが、どちらも結末の描写は同じである。

 

お久米については、地元で語られた河童の伝説にも登場する。

 

(米子の河童の伝説1)

米子城下の武家屋敷の厠で「毛むくじゃらな手がでてきてお尻を撫でる」という河童の伝説があり、この腕の主(河童)をお久米の生まれ変わりとする民話がある。

 

この民話の続きの後日談として、

 

(米子の河童の伝説2)

前日の悪戯で河童は武士に腕を斬られてしまった。

翌日、武士がうたた寝をしていると、先日に片腕を斬り落とされた河童が現れ、「半日以内に腕をくっ付けないと元に戻らない。お願いです、二度と悪戯はしないから腕を返して下さい」と願い出た。

河童に懇願された武士は腕を返すと河童は腕をくっ付け、更には置いてあった漬物石を持ち上げて見せた。

その光景を見て驚く武士に河童は「本当にありがとう。もう悪さはしません。お礼にどんな傷でも治してしまう傷薬を差し上げましょう」と、貝殻に入った薬を武士に差し出すと、何処かへ消えてしまった。

 

お久米が人柱とされた後に湊山の天守閣は完成するが、湊山築城後に城代として入城する予定であった古曳吉種は文禄の役で戦死、吉川広家米子城の完成を見ることなく周防国岩国へ減封、初代城主の中村一忠も20歳で急逝、池田家の池田由之も大小姓の神戸平兵衛によって殺害されるなど米子城に関わった城主には良くない出来事が憑いて回っている。

米子城も因幡国・伯耆国(鳥取県)最大規模の城でありながら、最期は二束三文で売却の後、解体という結末となった。

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