北条砂丘と北条平野の境界付近に所在する独立峰、標高93.9メートルの茶臼山に古城の所在を伝える。

 

伯耆民談記 茶磨山并美累可の濱の事

 

茶臼山は「茶磨山（茶葉を磨る意）」とも表記されるが何れも読み方は「ちゃうすやま」としている。

往時、周辺は茶畑が広がり、茶の製造場（茶葉を磨る施設）が多くあったことに因み茶磨山を号したとする。（伯耆民談記）

別名に「国坂山」とも呼称され、神社覈録（国坂神社の項）では「久爾佐加（くにさか）」を訓するとある。

 

因伯古城跡図志下 伯耆国　國坂村古城跡

 

因伯古城跡図志では主郭（イ）が四間（約7メートル）四方とし、主郭北側直下に腰郭（ロ）が所在としている。

主郭は古墳の墳丘を転用しており、見張櫓として利用されたと推測されている。

麓の居館（ハ）は字「殿屋敷」と考えられ、馬場、上馬場、下馬場の字名も残る。

北条町誌では殿屋敷を豪族の館と推定し、鎌倉時代頃から城砦が所在したとする。

1987年（昭和62年）の発掘調査では大型掘立柱建物跡や竪穴住居跡などが検出とある。

一説には天正年間、吉川元春、吉川元長が在陣したとも伝えている。

 

四宮神社は837年（承和4年）以前の創建とされ、現在は国坂神社と改称し国坂山に鎮座する。

国坂神社に関する記述では

837年（承和4年）

國坂神　従五位下（続日本後記）

856年（斎衡3年）

國坂神　正五位下（文徳実録）

867年（貞観9年）

訓坂神　正五位上（日本三代実録）

とあり、正五位上の神位が授与された際に「訓坂神」に変化している。

正保国絵図では国坂村を「君坂村」と記し、北条町誌では因伯高記に「くんさかむら」と読むとしている。

 

伯耆民談記 茶磨山の城

 

永正年間（1504年～1521年）

南条宗元（後の南条宗勝）の攻撃を受け落城とあり、烏有に帰したと表現されていることから徹底的な破壊が行われたと推定される。

城主には増田玄蕃、有澤左京亮を挙げているが何れも在原行平の子孫としている。

北条町誌では増田玄蕃允、有澤左京亮を橘行平（因幡守）との関係性を匂わすが、橘行平は因幡国で苛政を敷き、在庁官人を殺害するなど問題行動が多く伝えられる人物であることから、対外的に血統を誇示するものであれば在原行平の一族を称したと推測される。

 

鳥取縣神社誌 國坂神社

 

大永年間（1521年～1528年）

城主の増田玄蕃が四宮大明神（国坂神社）を再興とある。

南条宗勝は1524年（大永4年）の尼子経久による伯耆侵攻（大永の五月崩れ）を受け国外へ退去していることから、増田玄蕃は尼子方に与し存命したと推測される一方、有澤左京亮の消息は不明となる。

「在原」は「ありさわ」とも読めることから有澤左京亮が在原行平に近い一族の出自であったと考えられる。

永正年間、伯耆山名氏（山名政之）に与した藤原氏に所属していたとすれば、山名元之に与した南条宗勝に攻められた構図も理解でき、この時の敗戦で落命したとも推測される。

 

伯耆民談記 河村郡古城之部 羽衣石城

 

伯耆民談記 河村郡古城之部 田後の城の事

 

1579年（天正7年7月上旬）

南条元続が立て籠もる伯耆国羽衣石城攻略の為、吉川元春が伯耆国馬ノ山砦に着陣とある。

吉川元長は当城に布陣している。

1579年8月13日（天正7年7月21日）

吉川元長は当城より出陣し、南条元周が守備する伯耆国田後城を陥落させる。

 

伯耆民談記 久米郡古城の部 倉吉城の事

 

羽衣石南条記 吉川駿河守駒山在城の事

 

1580年（天正8年）秋

南条方の立て籠もる羽衣石城攻略の為、吉川元春は馬ノ山砦、吉川元長は当城に布陣する。

亀井家文書では当城が本陣とされ、吉川元春が着陣及び在陣としている。

羽衣石南条記では毛利元経を城将とする。

 

1581年11月21日（天正9年10月25日）

因幡国鳥取城の落城の報せを受けた吉川元春は吉川経家の弔い合戦として馬ノ山砦（当城とも）に、織田方は南条氏の支援を称した羽柴秀吉が伯耆国御冠山の陣（伯耆国十万寺城とも）に布陣し対峙を伝える。（馬ノ山の対峙、馬ノ山の対陣）

 

1617年（元和3年）

池田光政の国替えに際し、茶臼山が新府普請の候補地に挙げられている。

地形も良く測量（縄張）まで進められたが費用面で折り合いが付かず新城の普請には至らなかったとしている。

廃城の時期は不詳だが、新府普請の中止に伴い破却に転じたと推測される。